2012年4月18日水曜日


散歩に行こうとして、リードを繋ごうとしたら、とびでてしまったSさんの飼犬Sくんのケース

Case3 犬、♂、柴犬、8才

 とある夕方。暇だなぁとのんきに寛いでいた時、その電話がありました。
 スタッフが電話に出たところ、その電話はKさんからでした。
 「Kなんですけど、Sが車に轢かれました。今すぐ連れて行っていいですか?(注1)」とのこと。
それを聞いた僕は「え?Kさん?それとそのS君っていったら、あの性格のいい子?あの人、犬をすごく大事にしてくれている人だよね?この前も下痢かなんかで来院した」と確認してみます。
「そうみたいですね。どうしましょう。レントゲンの現像機つけますか?」スタッフが言うので、すぐに準備をするように指示を出しま した。
 もう何年間もホームドクター的な仕事をしていると、単なる犬、飼主、ドクター以上の感情が僕の心にも生じているので、複雑な気分になっていました。(注2)ちょうど知り合いの犬がどうかなった、といった感じでしょうか。


アトピー性皮膚炎の犬の治療

 Kさんが来院しました。歩行や一般状態には異常なさそうです。とりあえず一安心。
 経過をKさんに尋ねたてみました。(注3)散歩に出るために綱をつなごうとしたら、うまくつなげなかったのだそうです。ちょうどその時門が開いていたので、S君は公道に一直線に飛び出し、Kさんの見ている前で車に頭からぶつかってしまいました。その直後は意識がなかったようなのですが、電話をかけてすぐ意識が戻った、ということでした。
 一般状態を見て、どこにも異常はない様子です。頭部を強く強打して、一時的に脳震盪とかになったのかな?と思いました。念のためレントゲンも取ってみましたが、脊髄あたりにも異常はみとめられないようでした� ��

「外傷はないようですね。ただ、頭部を強く打っているようなので一日様子見てください。CT(注4)でもない限り、通常のレントゲンでは頭部内の出血はわからないのです。一日、吐き気とか症状がでなければ、多分大丈夫だと思いますから。」


 「そうですか。わかりました。様子みてみます。いつもだったら、門が閉まっているので、こんなことはないのですが……
 「そうですか。でもとりあえずは、なんともなさそうで、よかったです。もっとも、一日は様子みてもらうわけですが」
 「でも、今までも数回、飛び出してしまったことがあるんですよ。ま、車は来なかったんですけれどね。」(注5)と飼主さん。
やはり、こういうケースは多いようです。

「その時、気付いていればよかったですね。」
「そうですね。これから気をつけます。ありがとうございました。」

 後日、ワクチン接種に来たとき、その後なんともなかったこと、そして、この前のことを教訓に、門をしまっているのを確認して から犬に綱をつなぐようにしたことを聞きました。
こういうちょっとした注意で、交通事故には遭わないはずなんです。今回のように、軽いケースで飼主さんが自覚するっていうことは、まれな出来事です。どうしても、「死をもって自覚する」っていう飼主さんが多いです。皆さんもくれぐれも気をつけてくださいね。


注1:交通事故の時などはどうしても慌ててしまいます。でもこういうときこそ、飼主さんも落ちついて(実際は無理かもしれませんが、誰かに話をするだけでも落ち着くもんですので)まず最初に病院に電話を下さい。ものごとが迅速に進むことが多いですから。

注2:毎年予防とかで来てくださり、飼主の名前と顔、それとともに犬の名前と顔が一致する飼主さんのことは、単なる患者とドクターという関係以上のものを作れるわけです。ですから、そういう犬や猫が病気と聞くと心配になります。どんな病気か、それとともに僕が治せる病気かどうか、ということをまず考えてしまいます。しかし最近は、患者さんが多くなってきたせいか、犬の顔は見覚えあっても、飼主さんまで は……というのがあります。なんとか改善していきたいと思っております。


注3:慌てていて、経過をうまくしゃべれない人、もしくは経過を知っている人以外の人が来院して、「いつ・どこで・どうなったのか?」という基本的なことがわからないことがあります。犬や猫はしゃべれません。飼主さんの症状の説明が、しゃべれない犬猫の状態を知る上でとても大切なことになります。慌てているると、どうしてもうまくしゃべれないのかもしれませんが、できるだけ冷静に現状を把握することが大切です。

注4:獣医の領域でCTを持っている病院はかなり限られます。獣医学科のある大学病院以外は数えるほどなのではないでしょうか?しかも犬や猫は動きますので、麻酔や沈静をかけてからでないと、きちんと撮ることができません。人間の場合は、頭を強� ��した後にCTで検査をすることは普通のことですが、犬や猫では、どうしても限界があります。

注5:こういう事故というのは、かなりの割合で以前同じような経験していることが多いものです。あなたにもこういう経験はないですか?もしあったとしたら、今現在なにもないということは、ただ単に「運がいい」ということだと自覚してください。



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