まず初めに、テンカンの発作記録を公開してくださった「はる」様に、心から篤く御礼申し上げます。
生き生きと活写された簡潔な文章に、心から感服いたしました。状況が彷彿と目に浮かんできます。
フーン、癲癇って厄介なものなんだなあ…。貴重な発作記録を拝読させていただき、最初に浮かんだ素朴な感想がこれでした。そして、飼い主様と主治医殿のご慈愛・ご忍耐・ご努力に対し、敬礼!
私は獣医師でありながら臨床経験がなく、犬や猫のテンカンを見たことがありません。小学校3年か
4年生のころ、教室で倒れた男の子の口の周りに、黄褐色の泡がブクブクと出てくるのを眺めていました。それをテンカンという病気なんだ、と聞いた記憶がかすかに残っているだけです。
昔、私が獣医学生だった当時の教科書を探し出し、癲癇について調べると、こう書いてありました。
●癲癇はどんな動物にも起こるが、犬に最も多く発病し、他の動物では稀にしか見られない。
○急に意識を失い、同時に痙攣が起こるが、短時間で回復して通常の状態に戻るのが特徴である。
●脳腫瘍・脳炎・脳出血・脳内寄生虫などの脳疾患で起こる症候性癲癇と、脳に異常が認められない
のに発病する真性癲癇の二型がある。
○真性癲癇は原因不明であるが、遺伝との関係が指摘されている(父系よりも母系によって遺伝)。
そのため根本的療法がなく、抗痙攣剤を投与して痙攣発作を抑制し、自然治癒を待つよりほかない。
●癲癇は慢性経過をとり、数年もしくは終生続くが、転倒時の負傷や窒息を防止すれば生命の危険は
ほとんどない。発作が起こったときは安静にし、頭頚部を固定するなどして事故防止に努める。
隠居の私が今さら学者になるわけじゃなし、基礎知識はこれで充分。小鉄くんは真性テンカンで、遺伝は無関係と仮定しておきたい(もしも遺伝によるテンカンであるなら、欠陥商品を作って売った繁殖業者と販売業者の罪は重い。慰謝料1千万円を捧げ、「はる」様に土下座して謝罪すべし!)。
犬はモノを得ることができます
それらを踏まえた上で、前から気にはしていたけれど、今まで看過してきたあの80年以上も昔の医学書「内科診療の実際」に書かれていることに、正面からぶつかってみます。
このキッカケを与えてくださったのが「はる」様です。このページの下の方に、「はる様」発のメールを掲載させていただきました。そこに書かれているように、「テンカンはアルカリ尿と関係がある」のではなかろうか、と鋭く見抜かれたのが「はる」様です。まさに慧眼! 敬服、脱帽。本当にスゴイことです。
酸性・アルカリ性食品を紹介したページの下の方に引用してありますが、上記医学書に書かれている下記の記述が意味することは何か? テンカンとストラバイトの関連性、有りや無しや?
〔酸性食療法の適応〕 泌尿器疾患(腎盂炎、膀胱炎)、癲癇(てんかん)、喘息、
片頭痛、テタニー、嘔吐、結核、其他同化作用旺盛期(発育期、恢復期)
ただいま猛暑の最中、クーラーなき書斎で扇風機の風がそよいでいるものの、脳神経が弛緩して頭の中はモヤモヤ状態です。筋道立った理論を展開できそうもない。とりあえず、理路不整然ながらも断片的なヒラメキを、思いつくまま羅列しておきます(秋になったらキチンと書き直せるかもしれない?)
小鉄くんは洋ナシやミカンなどアルカリ性食品の果物を好んで食べていた。それにもかかわらず、
8歳になるまでストラバイト由来の膀胱結石とは無縁だった。この幸運の理由は何なのだろうか?
@ヨーキーという犬種は、チワワなどと同様に、ちょっと歩いたり走ったりするだけで尿が酸性化するの
ではなかろうか。
A室内で寝ているけれど、ケージに閉じ込められているわけではない。自分からオモチャを持ってきて
飼い主さんに遊んでちょうだいとせがむ。これなら運動不足になるはずがなかろう。
B猫との同居が良かった。追いかけたり追いかけられたりの運動によって、尿がアルカリ性になったま
ま低下しないという危険事態を、素早く回避できたのではなかろうか(一緒の猫も共に幸いでした)。
どのくらいのシリマリンは、大型犬用マリンになりました?
室内で暮らす犬・猫が運動不足や野菜・果物摂取、電磁波、可愛がりすぎによる交感神経弛緩などによって尿がアルカリ性になったまま低下しないとき、体内に溜まった過剰なアルカリを急いで体外へ捨てようとする。それで頻尿になったり、お漏らし(尿失禁)する場合が多い。また、血尿やキラキラ光る砂粒状のストラバイトが出たり、トイレの周りでソワソワ、ウロウロの排尿困難・挙動不審によって、飼い主に緊急事態のシグナルが発せられます(これが細菌感染ではない膀胱炎モドキの正体)。
ところが、小鉄くんの場合、幸か不幸か、上記@〜Bが機能するため膀胱炎モドキにならなかった。
たまにキラキラ(ストラバイト)を出すことがあっても、飼い主の「はる」様が気付いてくれない。気付いたことがあっても、無頓着・無関心で何も善処してくれない(教えたら動物病院のお客様が減る?)。
そのため、小鉄君の尿がアルカリ性になったまま低下しないというのに、「はる」様は果物を愛犬に食べさせ、さらに体内のアルカリ度をアップさせてしまった(カルピスもアルカリ性食品だが、舐めた程度では問題なし)。しかし、@〜Bのお蔭で速やかに体内のアルカリが酸で中和され、問題にならなかった。でも、それが良かったのか悪かったのか…。膀胱炎モドキの代わりにテンカンが出たのでは…?
そもそも、怖い敵がいない安全な室内でのんびり寝そべっていると、交感神経が弛緩して副交感神経優位となり、尿がアルカリ性に傾きがちです。また、野菜や果物などのアルカリ性食品を大量に食べて体内のアルカリ度が急上昇すると、体内で作られた酸類で中和し切れない過剰のアルカリが腎臓で濾過され、体外に捨てられます。このとき、当然、尿がアルカリ性になります。
腎臓で過剰アルカリを濾過したり、作用の相反する自律神経が絶えずピコピコとスイッチを切り替えたりしているのは、ホメオスタシス(恒常性維持機能)と呼ばれる生理現象です。この働きによって、血液・リンパ液・組織液や細胞液などの体液は、常にpH7.4±0.5の範囲内に調整されています。
それが何かの拍子で狂い、副交感神経が作動しっぱなしになって交感神経が動かない。あるいは、果物を食べたせいでアルカリ性元素(ナトリウム・カリ・カルシウム・マグネシウムなど)が体内に過剰に蓄積された。このままでは体液の恒常性を維持できなくなる。危険! 危険! 要注意!
急いでボクを走らせて! 走って、筋肉を疲労させて、乳酸を作って、体内のアルカリを中和したい!ボクがリードを引っ張って走りたがっているのに、「はる」お姉さんは知らん顔。リードを外してくれない。しょうがない、ボクは失神して倒れちゃおう。パタン。
果物を食べて溜まったアルカリを酸で中和しないといけない。急いで非金属性元素(塩素、硫黄、燐、炭酸、珪酸、ヨード、ブロム、砒素、硼素など)を含む肉や魚を食べさせてくれッ! それなのに、「はる」お姉さんはミカンをくれた。好きだからボクは食べちゃった。でも、ヤバイ。
肉や魚を食べないと、体液がpH7.45を超えてアルカローシス(アルカリ血症)になり、脳炎やヒステリーになってしまう。脳炎にならなくても、ストラバイトが出て膀胱結石になるかもしれない。膀胱の切開手術はイヤだ。しょうがない、ボクは失神して倒れちゃおう。ドスン。
テンカンで転倒した瞬間、副交感神経が遮断され、同時に交感神経が作動し、何らかのメカニズムによって過剰アルカリの中和が推進されるのではなかろうか?
(交感神経が極度に緊張すると血管が収縮して高血圧になる。発作時、小鉄くんの舌が真っ青になったのは血管収縮による血流障害では?そうであるなら交感神経緊張の証拠。尿が酸性のはずです)
また、転倒に伴う痙攣・硬直(筋肉の攣縮)によって、筋肉内で乳酸などが産生されるに違いない。
乳酸は過剰アルカリの中和に奏効し、余れば腎臓で濾過される。故に、テンカン発作後の尿が酸性になる…、のではなかろうか? これがテンカンの真相なのでは…?
私の勝手な空想にすぎず、学術的裏付けはゼロです。でも、今でもまだ真性テンカンの原因が不明であるなら、一つぐらい破天荒な仮説があったって良いじゃないの。どうせ群盲撫象なんだから。
小鉄くんの平穏で幸せな日常の生活の中で、ときには@ABが機能しないこともあったのではないでしょうか。雨で散歩に出かけられなかった。ニンゲンの都合が悪くて小鉄くんと遊んでやれなかった。
室内を荒らされないように玄関で留守番させた。猫の機嫌が良くてペロペロ舐めあった。等々、何かの拍子で小鉄くんの尿がアルカリ性になったまま低下しなくなった。膀胱炎モドキで「はる」お姉さんに知らせたのでは間に合わない。それで、テンカンによって我と我が身を自衛したのではないかしら?
学理の裏付けなんて後回しで構わない。もしも幸い、小鉄くんのストラバイト対策が成功し、尿pHが目まぐるしく上昇下降を繰り返すようになったとき、「オヤッ? このごろテンカンの発作が起きないなあ」、と「はる」様が驚いてくださればシメタもの。私の仮説が正しかったことになります。
そうなれば嬉しいのですが、どうなるか先のことは予見できません。「はる」様のご協力に頼るのみ。
小鉄くんの健康長寿を願い、「はる」様とのメール交換を続けさせていただきたく切望しております。
幸い、メール公開OKのお許しがいただけましたので、ありがたく以下に掲載させていただきます。
なお、せっかくの貴重なテンカン記録を、まだ充分に読みこなしていない気がしています。折りあるごとに修正して参りますが、pHスティックご利用の皆様からの忌憚なきご意見を歓迎いたします。
犬だけでなく、テンカン持ちの猫の飼い主様からも情報をいただけますれば誠に幸甚に存じます。
猫のテンカンは稀だというのが事実なら、それは、もしかしたら、トイレ砂で血尿が目立つお蔭かもしれません。室内で暮らす犬の多くは、排尿・排糞を屋外の地上でする。地面や舗装道路の上だと、血尿が出ても気付かれにくい。
いっぽう、室内で暮らす猫の多くは室内のトイレで排泄する。そのため、飼い主さんに膀胱炎モドキを気付いてもらえるチャンスが犬よりも格段に多いのではなかろうか。
その結果、室内暮らしの猫の多くがテンカンにならずに済んでいるのではないかしら?
つまり、猫も犬もニンゲンも、アルカリ性になったまま低下しない尿を速やかに酸性化してやれば、
遺伝でない真性テンカンを予防できるのではないか、というのが私の脳ミソに閃いた淡い期待です。
できますならば、人間のテンカン患者の尿pHを教えていただきたいのですが…。人間の場合、尿の
pHチェックが簡単にできますので、テンカン発作前の尿pHがアルカリ性かどうか、すぐ分かります。
もしも発作前の尿が酸性であれば、私の仮説「転倒は自己防衛」がウソということになりましょう。
でも、多分そうはなりますまい。どうしてかって? ホラ、内科医のバイブルとされる例の医学書に答えが書いてあるじゃないですか。テンカン患者の体内はアルカリ過剰=尿がアルカリ性、だから酸性食品を食べて体内の過剰アルカリを中和すべし、というわけです。〈未完成:2007/08/14 Dr.中島健次記〉
0 件のコメント:
コメントを投稿