Dr. 小宮山の伴侶動物へのやさしい(優しい)獣医学
最も実践的な獣医療のために
■はじめに | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
近年小動物臨床においては、疼痛の管理の重要性がより再確認されている。今回はそのむずかしそうな疼痛の管理を出来るだけ優しく(易しく)解りやすく解説を試みました。小動物臨床においては、70年代は疼痛管理の記載は皆無で、80年代から少しずつ体系づけられ、90年代において応用されはじめ、2000年代においては、疼痛管理はほぼ常識化されて来たようです。 それゆえに現在、動物病院にて診察をしている獣医師にとって、疼痛管理は避けられない事項である。今後は動物に少しでも苦痛を強いないようにすれば、動物の遺伝子はそれを覚えていて、代々生まれ変わるごとに、より人間と共生できる動物になりうると私は信じています。 また動物病院のマネージメントの観点から言えば、今後は飼い主が鎮� �剤を使用しているのがわかるように、計算書の項目の、注射を一括にするのはなく、麻酔薬のように、別に鎮痛剤・鎮静剤の項目をあらたに付け加えると良いであろう。 今回の解説は、論理や原理については、殆ど省いてありますので、いろいろな成書を参考にしてください。今回は小動物臨床を行う臨床家が忙しいなかで、一目でわかる犬猫の疼痛管理のその易しい臨床応用をいかに行うかに重点を置いて解説しまいます。最近において塩酸ケタミンが麻薬指定となることが論議を呼んでいますが、論議はさておき今回はケタミンを含めた犬猫の疼痛管理について、勉強する良い機会として捉え自身の動物病院にての疼痛管理をより一歩進めて、より良い小動物臨床を提供できる環境を整えることが先決と思われる。 ある意味� ��おいて、疼痛管理は麻薬の許可を得ていないと、できにくいものである。ケタミンを麻酔薬としてのみ使用するのではなく、塩酸モルヒネ等の使用のために動物の疼痛管理には麻薬が必要となるので、許可は臨床獣医師にとってより良い診療のためには不可欠と考えて良いであろう。 私達の臨床獣医師は最終的な治療目的は、動物の痛みを取り除く事である。たとえその病気が治療できなくても、痛みだけは動物から除くことを心がける必要があろう。多くの飼い主は自身の動物の痛みには敏感であり、最低限、痛みだけは取り除いて欲しいと望むものである。獣医師はそのために理論武装して、実際に行う必要がある。 痛みは死そのものより恐ろしいと言われ、我々獣医師は動物の痛みを克服すべき使命を課されているものと 考えるべきである。私達の動物病院では、待合室に「疼痛拒否宣言」を提示しています | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
■犬猫の疼痛管理の理論と実際 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
以前の獣医学においては、動物は人間より、痛みを感じない?手術後は多少痛みがあるほうが休息と回復に役に立つ、動物は人間より痛みに対して耐えうる、飼い主には余計な出費になる、疼痛なしは動物に自己損傷の原因となる、使いすぎれば薬物の乱用となる等、とか言われあまり痛みに対して関心を払うことは少なかった状況は多少ともあったようであるが、現在の獣医学において、それらは否定されています。大脳皮質がある限り痛みは感じます。また例えば鎮静剤や鎮痛剤の使用説明の解説も、強い疼痛時の場合のみ使用とかの表現が使用されたりしていて、このことが鎮痛剤を使用することの制限となっている場合もあるようである。 ではその鎮痛剤の効用であるが、心肺機能の抑制を抑え、治癒率、生存率の向上のために使用されている。最近では癌の転移を遅らせる働きがあることも判明している。このことは痛みがあると、治癒が遅い、合併症が起りやすい、免疫が低下する、転移が速まると言える。また例えば最近の癌の治療の獣医学書において、昔は疼痛管理のページはあまり記載がなかったが、明らかに記載が目に見えて増加していることが如実に示している。また疼痛管理は動物と飼い主及び動物病院で働く職員のストレスの軽減に大いに役に立っていることも忘れてはならない。 まずは鎮静についてであるが、鎮静と麻酔との境界線はなく、不明瞭であるが、主に鎮静とは外部からの刺激に対しての反応の低下と理解されている。動物と医療従事者にとっても鎮静は共に安全のため重要である。特に動物がおとなしい性格でない場合は特に重要となる。恐怖や極度のストレスは交感神経の活性を高め、事故が起る要因となりうる。これらの鎮静剤は動物に精神面の安定に作用するが、鎮痛剤の作用を増強して、鎮痛剤の補助的な働きをするが、強い鎮静剤は、動物の行動を制限することがあり、日帰りの手術等では問題となる。そんな場合は軽くするか作用時間の短いものを選ぶべきである。例えば手術後の鎮痛剤の使用は通常は最低でも3日間は必要である。 現在考えられていることは、疼痛� �理によって得られる利益は、鎮静剤や鎮痛剤の使用による不利益を上回るものである。ゆえに手術後の疼痛が予測される場合は、動物の痛みによる外見的な行動にかかわらず、鎮静剤や鎮痛剤を投与すべきである。 例えば去勢や避妊手術においても鎮静剤や鎮痛剤の使用は現代の獣医学では常識となりつつある。まれに飼い主はこれらの手術においても、可愛そうだからと言って手術を避ける、嫌がる飼い主がいるが、そんな場合はその理由を聞くと過去に手術を受けたときに動物が痛がり、数日間元気なくあまり動かなかったとか、夜眠れていないで一晩中付き添いやっと少しは寝られたとか、いろいろな理由を言うものである。手術を受けたのだから、多少のことは動物も飼い主も我慢して当たり前?と考える獣医師が� ��たとすれば、時代遅れであり、考え直す必要が大いにあろう。 そんな場合には、麻酔前の精神状態、麻酔中及び麻酔後の疼痛管理を具体的に、いろいろと説明し、いかに鎮静剤や鎮痛剤の使用で動物の状態が変わるか、例えばその鎮痛剤使用による5大行動変化(動作、食事、飲水、排便、睡眠)のことを説明すると良いであろう。鎮痛剤を使用すると、動物はより早く動け、より早く食欲がでて、より早く水を飲み、より早く排便し(このことは稀に手術後に起る麻痺性イレウスの予防にもなる?)、より早く良い睡眠ができるようになる。鎮痛剤を使用していると、翌日から入院動物が手術前と同じように動き(ゆえに何時手術をしたのか覚えてないと判断つきません)、パクパクと食事する姿を見て、何か嬉しくなる のは、獣医師冥利につきます。飼い主に面会させれば、考えていた事との差に驚くことであろう。痛くない手術こんにちは!痛い手術さようなら!である。 また特に飼い主に説明したいことは動物や飼い主における精神面の問題である。動物によっては、いろいろな刺激に対しても大きく反応をする動物もいる、それらの動物を飼育する飼い主の多くは、そのことを知っており、それらの動物に対しての手術(麻酔)前の精神状態の安定には鎮静剤、鎮痛剤の使用はより重要となる。 人間の医学では、過去に手術を受け痛いと感じた子供が、予防接種の際に過剰に反応(痛みを感じる)すると言うことが判っており、おそらくこのことは動物も同じことと考えられる。 動物が動物病院に来たらす� ��に身体検査後、鎮静剤を投与することを飼い主に約束すれば、かなりその反応は違ってくる。しかし動物の痛みには、急性の痛み、慢性の痛み、手術後の痛みを始めとして、癌の痛み、外傷等の疾病の痛み、内臓痛、骨や関節の痛み等いろいろあります。 この痛みの問題は、最近まで人間の医学でも癌の痛み(がん患者の8割が痛みに苦しみ、3割が診断初期から痛みを訴える)にモルヒネを使用すると中毒になる、との誤解から、苦しみ抜いた末の死を迎える結果となり、これが社会問題化され、遅ればせながら2007年4月より「がん対策基本法」が施行され、ホスピス(緩和ケア病棟)への取り組みが強化されました。人間の緩和ケアの専門家は「がんの痛みは治療できる症状、それを取り除くのは医師の義務」と 言っています。ちなみに日本は、モルヒネの使用量はカナダの14%でそれだけ緩和ケアがされていないと言うことです。 疼痛管理でいつも問題になるのは、動物が疼痛を感じているかの論理である。最近「動物のいたみ研究会」が発表した5段階での評価によると、以下の通りのようである。
動物の疼痛の有無を調べるのに最も有益な方法は、触診による判定と思われる。しかしながら、触診に対する反応は、動物種や術前のその動物の正常な動作、その手術の内容、使用した薬剤等と関連づけて評価をする必要がある。特に恐怖やその攻撃性からの嫌がる動作は、その麻酔前の同じ行動と比べないと、不確かになる可能性がある。ゆえに術前にあらかじめ調べておくことがきわめて重要である。
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■手術周術期の麻酔管理の理論と実際 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
痛みはアライドン酸がシクロオキシナーゼ(COX)によって代謝されることによって発生します。主な鎮痛剤の作用はCOXを阻害することによって鎮痛効果を表します。最近はこの痛みに対して、先制(先取り)鎮痛(Preemptive Analgesia)といわれる用語が使用されているが、これはまだ確定的なものではないが、広く受け入れられているものである。麻酔管理の疼痛管理は、麻酔前と麻酔中と麻酔後に分けて考えるべきである。術前は手術開始時に先制鎮痛が効果を発揮している時期と用量で投与するべきである。 また鎮痛剤や鎮静剤の使用は、作用機序のことなるいくつかの薬剤を組み合わせて使用すると各々の投与量を少なくし、より少ない副作用で使用できるものである。これをマルチモーダル鎮痛(Multimodel Analgesia)と呼んでいる。これは違うクラスの鎮痛薬を使用するという事で、一つの鎮痛薬の用量を下げてやる事ができるのです。例えばオピオイドのみ使用は規程量は使用しないとあまり効きませんが、そこに術中から局所麻酔を使用とか、NSAIDを使用とかで、かなりの用量は減量できるからです。 疼痛管理で重要なことは1つの薬剤で疼痛管理ができないことである。例えば効果のある、オピオイドこれ単独では疼痛は70-80%は痛みを取ることはできるであろうが、20-30%は残る。これにNSAIDsを加えれば例えば残りの15%ぐらいの痛みは取れ、また局所麻酔を加えれば・・・と言うように使用するのが疼痛管理の常道です。ようするに相乗、相価作用を利用するわけです。また各々に不足する作用を補うことが可能で、例えば筋弛緩作用と� ��痛作用を同時に得られることです。
MOR部分作動のブトルファノールとKOR作動のブプレノルフィンの同時使用は通常しない。しかし各々の作用が消失すれば使用できる。もちろん塩酸モルヒネとの併用は可能である。麻薬を使用する際には、使用の有無に関わらずその拮抗剤(ナロキサン 0.04mg/kg IVにて投与する)を用意しておくべきである。ベンゾジアゼピン(ミタゾラム、ジアゼパム)にも、フルマゼニル(アネキセート)と言う、ベンゾジアゼピンの受容体拮抗剤がある。その投与量は投与したベンゾグアゼピンと同量である。 フェノチアジン系の薬剤として、我が国にプロプオニルプロマジン(コンベレン)が以前はあったが現在では発売されていない。麻酔中は努めて3種類以上の異なる方法でモニターをするのが望ましい。できればその中に血圧も含める、例えばNSAIDsを使用している動物に、麻酔中に血圧の低下があれば、輸液をして対応をするが、その後はNSAIDsを使用しない、麻酔後に腎疾患が起る恐れがあるからである。また覚醒後に心拍数が30%以上低下していれば、抗コリン作動薬(アトロピン0.0 2-0.04mg/kg,グライコパイオレート0.005-0.01mg/kg、これらの量はIM,SCの量で、IV投与の際は、1/3-1/4の投与量となることに注意が必要です)を使用する。また呼吸数が30%以上増加していれば、その原因を考えるのと同時に鎮静剤、鎮痛剤の使用も考慮する。 真の意味での疼痛管理は、麻薬がどうしても必要となる。これは許可だけの問題なので、ぜひ臨床獣医師は許可を申請することをお勧めする。麻薬を使用できないと、軽度の疼痛管理のみとなる。 最大限うまく行っても軽度から中等度までが限度である。特に中程度から重度の規模の手術(不妊手術等で手術の約80%以上がこれに該当)を行う獣医師は、麻薬による疼痛管理をすることが望ましい。 ショックで犬と一緒に発生する可能性があります合併症 ある意味では臨床獣医師は、麻薬を使用できる、できないで二つに分類される。許可の問題は獣医学に対する思い入れの問題でもある。許可を得て、鎮痛剤を使用すれば獣医師の社会的な地位の向上にも繋がる可能性もある。最近は飼い主もインターネット等で病気の診断や治療に関して知識を入手しているので、例えば骨折の手術等に関して、「先生の病院でも、麻薬による疼痛管理をやっていますよね?」と尋ねられる日も近いと思われる。 手術を代表にいろいろな状態の疼痛管理を考えると、軽度、軽度から中程度、中程度、中程度から重度、重度となる。参考までに各種のどんな手術及び疾患がどの程度に属す るかも以下に簡単に記載します。 外国薬には※の印記載があります。 軽度の疼痛管理には、以下の組み合わせを考えて使用する。各々の薬用量は特に、高齢やその健康状態によっては、できるだけ記載の最小用量にて使用するのが原則である。同一の薬剤を術後にも使用する場合は特にそうである。軽度の疼痛管理のみ麻薬の許可の要らない薬剤で使用できる。 また疼痛管理は手術の種類のみならず、動物の状態、年齢はもちろん、その動物の性格をも十分に考慮して行う必要がある。また動物が少しでも不安にならぬようにと、普段の用具等を飼い主に持参してもらうと良い。動物のその扱いも重要で、易しく接すること(視覚的、触覚的接触)によって、生理的状態の疼痛への反応に変化が生じる可能性があると推察されているからである。 ここで、「麻酔と疼痛(鎮痛)と不動化」について考えてみたい。普段当たり前に?麻酔を行っている我々だが、その麻酔薬には殆ど鎮痛作用はない事を再確認(また逆に鎮痛剤には麻酔作用がない)しておきたい。麻酔すれば不動化はできるので、手術もできる、と思うことは間違いである。麻酔中の動物は痛みを感じないが、覚醒後には、手術中に受けた痛みの刺激が脳や脊髄に伝達していて、覚醒後にはそのままだと痛みの反応が増強される。これらは手術の侵襲で組織障害が起こるための生急性な疼痛であり、手術の種類や部位によってかなり違うが、動物は手術後その痛みは約4時間後で頂点となる(人間は約8時間後)ようである。また動物の性格によって術後の痛みの程度が多少違う(猫や訓練された大型犬は� ��っと耐えることあり)こともあるので、観察の上、追加の鎮痛剤の量を決定する。 麻酔はその深度(深さ)によって、その生体機能を抑制するが、麻酔中にその痛みの刺激が強いと(手術の種類と部位による)動物は生体機能の反応として、血圧、呼吸数、心拍数等が上昇し、最後には体動(振るえ)が起る、そこで手術ができない(動くから)から、麻酔を深くする、すると生体機能は低下するので、反応は起きなくなるが、 しかしこのことは麻酔がさらに深くなることである。麻酔が深くなると覚めが悪くなる、と言うことは、麻酔事故にも繋がる可能性がある。 麻酔をして動物が動くので麻酔を少し深くした、そのために覚醒しなかった。しかし動けば手術ができなかったので、やむを得ない麻酔であったと、考えるのは再考の余地があったと気づくであろう。これらのことは鎮静・鎮痛剤を使用していない場合に起りうる事である。このとこからわかるように麻酔即、手術、手術即、鎮痛である。
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■非ステロイド系抗炎症剤の犬と猫の使用法 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs-エヌセッド又はナサイドと呼ぶ)は通常は動物病院で最も使用される頻度の高い鎮痛剤である。NSAIDsはCOX(シクロオキシナーゼ)酵素を阻害することによって抗炎症作用を発揮するが、すべての製剤が同じではない。持続時間は約24時間(1日1回)、作用発現時間は約1時間である。しかしその使用においてはオピオイドと違い、いろいろな程度の禁忌があることである。 人間の医学ではより汎用されている薬剤であるが、犬猫は人よりもこの薬剤に対して、感受性が高いようで、人間で使用できても犬猫には、そうはいかないようである。投与の際は、多少胃の中に食事があつた方が、胃の粘膜は保護されるようで、食事と共に投与すると良いであろう。またこの薬剤の多くは下� �作用もある。 犬の分離不安の症状 副作用として知られているのは、胃腸障害、腎障害、肝臓障害、血液障害である。ゆえにあらかじめこれらの疾患を持つ動物には投与しない。また脱水状態や出血性疾患の動物も使用しない。もちろんステロイドとの併用は禁忌である。副腎皮質機能亢進症はもちろんであるが、以外と気づきにくいのは、ステロイド様疾患(これも体内からステロイドの放出あり)の動物である。それらの状態にあると判定された場合は注意を要する。使用初めて特に2-3日後に下痢(特に黒色便)や嘔吐起った場合は使用を中止し強力な胃潰瘍の治療を開始する。これらの消化器症状の前には食欲不振が起ることが多いので、この時点で疑うこともできる。ゆえに始めは1日1回を、2� �の分割投与する方法も考慮する。 NSAIDsを使用する際に重要なことは、過剰に投与(誤食等を含む)した場合や、反応した場合に備えての治療薬(潰瘍治療薬)をあらかじめ備えておくことである。前記したように食欲不振の後に嘔吐や下痢となることが多いので、食欲不振時に投薬するのが良いであろう。ますはスクラルファートを推奨したい。胃の粘膜の欠損部に結合するため、胃酸の浸入を防ぐ。潰瘍の予防(効果)には推奨されていないが、高齢とか手術後や外傷後のストレス状態にある動物(たぶん胃に潰瘍の前の段階である、糜爛が出来ている?)にNSAIDsを使用する場合には併用をお勧めする。 スクラルファートは、投与の前の1時間と投与後の2時間は、他の薬剤を経口投与で与えない方が良� ��であろう。胃の粘膜が保護されていて、吸収が悪くなるからである。このことは食事も同様で投与前の1時間の空腹時に与える。スクラルファートの投与量は、犬で20kg以下は500mg、20kg以上は1-2g/頭で6-8時間有効である。猫の場合は、250mg/頭を与えるが8-12時間有効である。錠剤より懸濁液を使用するが、錠剤の場合は砕いて溶かして与えると良い。 明らかより糜爛や潰瘍を疑う場合は、ミソプロストール(サイトテック)もスクラルファートと併用できるので投与すべきである。この薬剤は人間では癲癇の発作を誘発するようで、動物もその可能性があるので癲癇の病歴のある動物は、その有効性を考えた上で判断する。妊娠動物(流産の原因)にも使用しない。犬には2-7.5μg/kg、6-8時間有効で、猫は5μg/kgで8時間有効すべて経口投与である。副作用としては、下痢と嘔吐と腹部の痙攣(これが流産の原因)がある。 血便のように潰瘍が確実と思われた場合は、潰瘍の本格的な治療を開始する。これはスクラルファートとラニチジン(ザンタック)又はオメプラゾールを使用する。オメプラゾールはプロトンポンプの阻害薬であり、酸の産生と刺激の分泌の両方を抑� ��する。胃と十二指腸と食道下部に働く。犬は0.5-1.5mg/kgを24時間毎に最高連続投与は8週間まで、猫は0.75-1mg/kgの経口で24時間毎である。できれば経口薬と注射薬を用意して置く。経口投与が出来ない場合は注射薬が使用される。犬は経口投与は1-2mg/kg、猫は3.5mg/kgで12時間毎である。注射の場合は、犬は0.5-1mg/kg、猫は2.5mg/kgにてIV、IM, SCされる。 慢性の関節炎等にてNSAIDsを長期に使用する予定の場合は、他の鎮痛剤や、理学療法、サプリメント、減量のための食餌療法、関節内注射等の併用を考えて使用する。また飼い主にあらかじめ副作用のことを告知しておくと良い。できれば口頭のみならず、書面にてその効果の判定表と共に、副作用を知らせておくと良いであろう。通常は2週間毎に、その使用を再検討しながら評価する。長期の使用の際にはできるだけ有効(気分の良い状態)の最小量を見つけ出すことが肝心で毒性の可能性が少しでも減少する。 手術の前に使用する場合は、2時間前に使用する。もし以前に非ステロイド系抗炎症剤が投与されていて、また新たに違う非ステロイド系抗炎症剤を使用する場合は、少なくとも5-7日間は間隔を空ける。� �去にステロイドにての治療経歴があれば2週間(短期型のステロイドの場合にて)は間隔を空けるのが望ましい。妊娠中及び授乳中の犬、何週齢未満で使用できるかは製品に違いがあるので各々の製品の注意書きを参照する。繁殖犬の安全性は今まだ不明のようである。 カルプロフェン(リマダイル) 犬: 4.4 mg/kg q24h、チュアブルのタイプも発売されている。 最近になって連続投与の回数の制限がなくなったが2週間毎に注意して評価すること。最近なってリマダイルには使用回数の制限がなくなったので、観察をしながらの長期使用も可能である。また国内では猫への使用の承認はないが、諸外国では、他のカルプロフェンにて4mg/kgのSC,IVにて1回のみ使用されているようだが、1-2mg/kgにても同じように有効との説もある。 ケトプロフェン(ケトフェン)について メロキシカム(メタカム)について 犬猫用「メタカム0.5%注射液」メロキシカム(メタカム)1mL中、メロキシカム 5.0mgを含有。 テポキサリン(ズブリン)ズブリン50、ズブリン100 及びズブリン200は、1錠中にテポキサリンをそれぞれ、50mg、100mg 及び200mg 含有する白色の錠剤(口内崩壊錠)である。
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■猫の疼痛管理について | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
猫の疼痛管理は犬に比べて、文献的に少ないこともあるが、最近ではその研究も以前に比べて格段に進歩しているようである。疼痛管理に関しても、猫の小さい犬ではないので、薬剤の活性のその違いを理解して疼痛管理を行うことが重要である。痛みの現れ方にしても猫はただじっとして、痛みに耐えていても、ただ単に、おとなしい猫と間違われることもあるかもしれないからです。猫は痛ければ泣き叫ぶ?と思っていたら間違いを侵します。概して猫は効果の発現が少し遅いようで、その効果も少し長く聞くようである。
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■すべての手術に応用できる、局所麻酔の使用の伝達、浸潤麻酔について | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
以前の獣医学では、特に浸潤麻酔については、これらの方法がどれだけ作用するかは、不明の点が多く、文献的にもあまりありませんでしたが、最近は少しずつ報告されつつあり、経験的にもより多く使用されはじめています。局所麻酔薬を、術野に術中又は術後に、すべての手術の症例において浸潤麻酔を使用することをお勧めします。どんな局所麻酔を使用するかですが、0.25%の塩酸ブビバカイン(マーカイン)を使用します。プロカイン等に比べて作用時間(リドカインは90分ですが、ブビバカインは200分)が長いからです。 0.25%の塩酸ブビバカイン(マーカイン)を、犬にては手術時に初回のみ使用の場合は(1日1回のみ)2mg/kg (0.4ml)を傷(切開部位)の大きさに応じて、例えば2-5mlとかの生食に希釈して術野に使用できます。だいたいは切開創の周りの筋肉(必ず引いて血液が混入しないか確かめる)に半分、残りの半分を切開創に満たします。 またあらかじめ数回使用する予定の時は、初回の使用量を、犬1mg/kgとして適当な量の生食に希釈して6.14.24時間毎使用の1日4回まで使用できます。切開部位以外にも例えば関節の手術後には全て、閉じた時に関節内に注入します。 これらの希釈濃度にすると例え静脈に入っても、すなわち静脈注射しても安全な濃度とされています。故にお勧めの濃度となります。希釈しなくても通常は使用できますが、より安全な医療を心がけるとすれば希釈すべきです。より経済的には、0.5%の塩酸ブビバカインの使用ですが、少し複雑になります。0.25%は2.5mg/mlの含有ですが、5%は5mg/mlの含有です。これは米国薬も日本薬も同じです。すなわち5%の場合は2mgが0.2mlとなり (0.25%は0.4ml) ますので、この時点で生食で2倍希釈して、0.25%と同じ濃度にして使用すれば同じこととなります。 また術後にはカテーテルで術野に投与することもできます。カテーテルの場合は、数回使用しますので、初回に犬2mg/kg(猫は1mg/kg)にします。その後の使用は、犬1mg/kg(猫は0.5mg/kg)を希釈して24時間までは使用できます。この術式の適応は、手術創が大きい場合やNSAIDのような、他の鎮痛薬が禁忌である症例が特にそうです。またできるだけ早く回復させたい場合、早くリハビリしたいと思われる例です。 例えば、大型犬の断脚をやった場合などがそうです。ポリエチレンのチューブには細かいサイドホール(小さい針にて)を開けて、この中に麻酔薬を満たします、先端は閉じます。長さは普通30cm前後です。この原理はホースに小さい孔をいっぱい開けて、庭に幅広く水をやるというシステムと同じです。(市販ものでは、イントラメディックポリエチレンチュ-ビング -ベクトンデキンソン-PE No.90 内径0.86×外経1.27mm、10フィ-ト×1巻 カタログのナンバーは427420) 投与の速度は、心室性期外収縮の治療に使うリドカインと、全く同じ方法です。ただし心臓に使う場合は、50-80μg/kg /Minですが、この場合の麻酔効果を得る時は30μg/kg/時間の速度となり遅くします。 この塩酸ブビバカインは作用の発現時間は10-15分ですが、約4-6時間作用します。 もしこれらの薬剤が静脈内に入った時は、中枢神経系や心血管系に対しての副作用が出ますが、この用量はIV投与でも、比較的に安全な用量です。また局所麻酔薬というのは、その傷の治りには阻害せず、むしろ、汚染に対して局所麻酔薬があると、細菌に抗生物質が浸透していくという浸透性がより良くなります。例えば直腸の手術したのならば、その後にチューブ状の局所麻酔を直腸に注入もできる。 疼痛管理にて、きるだけマスターしておきたい技術として硬膜外麻酔と神経ブロックがあります。また体腔内(関節内投与、、腹腔内投与、胸腔内投与等)です。前記した持続注入もそうです。硬膜外麻酔は特に犬に塩酸モルヒネを用いて使用することをお勧めします。
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■おわりに | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
国際獣医疼痛管理学会は2003年に設立されました。動物の疼痛管理の啓蒙に勤めていて、最新の疼痛管理の情報を得ることができます。一度Websiteを御覧ください。会員は獣医師、医師、歯科医師、研究者、VT等で約900人とのことですが、日本からは獣医師のみで参加者は只今3人(2006年11月末現在)のみとのことです。日本はリージョン7で会費は年$45.00です。興味ある方は参加して情報を得てはいかがですか。 CRI(持続点滴投与)については、なかなか臨床家には一見その計算方式が複雑で、躊躇しやすい傾向にあるが、昨今の小動物臨床においては、その薬物動態の特性を生かすために、CRIのその重要性はますます強調されています。今後は多くの薬剤がCRI又は併用が推奨されると予想されます。CRIのマスターは今後の獣医学の重要課題となるでしょう。ちなみに最近になって私達の動物病院では重症の心不全の治療にフロセマイドの単独投与と共にCRIにてフロセマイドを投与(作用時間は6時間につき、例えば2mg/kgとして、6×4回=24時間につき8mg/kgを24時間で投与する)した所、その治癒率の違いにびっくりしています。CRIの計算式はコンピューターにて計算が可能で、米国の獣医師は当たり前に使用しています。 その計算式の「エクセル」は、私達の動物病院のホームページの獣医師の皆様へ、卒後継続教育プログラムに記載してありますので、御自由にダウンロードして御使用ください。これは米国のDr,Tim Hackett先生の御好意(日本語訳の許可済)によるもので、各々の薬剤は日本の用量に変換(例えば米国ではケタミンは1mlが100mgだが日本では50mgとして)してありますので、そのまま使用できますが、あくまでも自己責任で御使用ください。また今回、記載※のある外国薬は、動物病院の開業獣医師であれば、すべてGuam Veterinary Supply( 最後に蛇足ながら、御自身が、手術を受ける際には、手術を受ける前に疼痛管理のやり方を医者にいろいろ質問して、最大限の効果が得られるかを確かめましょう。痛くない手術は何度受けても平気?と言われ、元気になるためには、病気に打ち勝つには、楽しい気分になること、心が不安な時も、楽しい気分で心配事を吹きとばすためには、最低限痛くないのが条件です。これはある有名な雑誌の編集者が体験したことで、重度の痛みのためか、かなり衰弱して入院した彼は、自分が笑っている時、楽しい気分の時のみ、痛みを忘れることができる、と言うことに気づきました。そして楽しい気分になるには"笑い"が良いと発見し、"お笑い健康法"という独自の治療法を開発したのです。ジョーク集を多く読んだり、自ら冗談� ��言ったり、お見舞いに来る人には必ず冗談を考えてくるように頼んだり、またいつも楽しいことばかりを考え、テレビもお笑い番組選んで見てとうとう彼は病との闘いに勝ったのでした。しかし夜寝ている時は、笑えないので、やはり鎮痛剤にて痛くなくして、夜はぐっすり寝て体力をつけたとのことです。これって犬猫も同じこと言えるかな?犬猫にも楽しい気分を感じてもらい、早く病気が治るような環境づくりを心がけましょう。
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